AMR(自律移動ロボット)の価格相場|安く導入する方法は?
製造業・物流業において、人手不足対策や搬送作業の自動化を目的に、AMR(自律移動ロボット)の導入検討が急速に進んでいます。
一方で、検討を始めた多くの企業が最初につまずくのが「価格が分かりにくい」という点です。AMRは機種や構成によって価格差が大きく、インターネット上の情報だけでは自社にとっての妥当な相場感をつかみにくいのが実情です。
本記事では、製造・物流業でAMR導入を検討している方向けに、価格相場の考え方から、価格を左右する要因、そしてできるだけ安く導入するためのポイントまでを整理して解説します。

目次
AMRの価格帯|まず押さえたい相場感
AMRの価格は「〇〇万円」と一律で語れるものではありません。なぜなら、AMRは単なる搬送機械ではなく、センサー・ソフトウェア・安全機能を含めた移動ロボットシステムだからです。
一般的な目安として、AMR本体の価格帯は以下のように整理されます。
- 小型・シンプルな搬送向けAMR:おおよそ300万〜600万円
- 製造・物流現場で多く使われる標準モデル:800万〜1,500万円前後
- 重量物対応・特殊用途向けの高機能モデル:2,000万円以上
ここで重要なのは、「本体価格は単純に可搬重量だけで決まるわけではない」という点です。
確かに、可搬重量が大きくなれば、車体構造や駆動系が強化されるため価格は上がる傾向にあります。しかし実際には、価格を大きく左右するのは重量そのものよりも、付加される機能やシステムの複雑さです。
例えば、
- 高精度なLiDARやカメラを複数搭載しているか
- 人やフォークリフトが混在する環境で高度な障害物回避が求められるか
- 複数台を同時制御するフリート管理機能が必要か
- クリーンルームや屋外など、特殊環境に対応する必要があるか
といった条件が加わるほど、価格は上昇します。同じ「可搬重量100kg」のAMRであっても、使用環境や安全要求が異なれば、価格が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
また、AMRの価格帯には国・地域ごとの傾向差も見られます。
欧州(特にデンマークやドイツ)はAMRの先進地域であり、安全規格やソフトウェアの完成度が高い一方、価格は比較的高めです。北米メーカーも同様に高性能志向で、価格帯は中〜高価格帯に位置します。
一方、中国メーカーは近年急速にAMR市場を拡大しており、価格競争力の高いモデルが多いのが特徴です。ただし、サポート体制や日本の現場への適合性については、事前の確認が欠かせません。
このように、AMRの価格相場を理解するには、「重量」「機能」「使用環境」「メーカーの国・地域」といった複数の視点で捉えることが重要です。
AMRの価格を決める主な要因

AMR価格は本体だけでなく、導入・運用全体の構成で決まります。重要な要因は以下です。
① 本体仕様・機能
- 積載重量
- 走行速度
- センサー性能(LiDAR、カメラ、SLAM 等)
- 安全機能・衝突回避性能
AMR本体の仕様は、価格を左右する最も基本的な要素です。
まず積載重量が大きくなるほど、フレームや駆動系(モーター・減速機・タイヤ/サスペンション等)の強度が必要になり、バッテリー容量も増えるため、本体価格は上がる傾向にあります。ただし価格は重量だけで単純に決まるわけではなく、実務上は「安全に走らせるための認識・制御のレベル」が大きな差になります。
たとえば、LiDARやカメラの搭載数・視野、SLAMの精度、混雑環境での障害物回避、狭路や交差点での挙動の賢さ(停止・徐行・迂回の判断)などが高度になるほど、センサー構成や計算リソース、ソフトウェアが強化され、価格が上がります。さらに、人やフォークリフトが混在する現場では安全要件が厳しくなるため、安全機能(安全レーザスキャナ、緊急停止、速度制限、冗長設計など)のグレードが上がり、その分コストも増えます。
要するに、高機能ほど運用の自由度は上がりますが、ハード・ソフト両面で構成が厚くなるため価格も上がる、というのが基本の考え方です。
② 周辺環境との連携
- Wi-Fiなどネットワーク整備
- 充電ステーション
- フリート管理ソフトウェア(複数台管理)
AMR導入時には、本体以外にも周辺環境の整備が必要です。無線LANなどのネットワーク環境、充電ステーション、フリート管理ソフトウェアなどは追加コストとなります。
特に見落とされやすいのが、通信環境と運用設計がセットでコストに効いてくる点です。たとえば倉庫や工場の電波状況が不安定だと、アクセスポイント増設やチューニングが必要になり、導入費用が膨らみます。また、充電方式(自動ドッキングか手動交換か)や充電器の台数は、稼働率と直結するため、運用要件次第で必要設備が変わります。
複数台運用を前提とする場合は、フリート管理(交通整理、ジョブ配車、優先制御、稼働監視、ログ分析など)の有無・機能差がコストに影響します。台数が増えるほど「本体価格の合計」だけでなく、管理ソフトのライセンスや運用に必要な周辺整備の比重が大きくなる点も押さえておきたいポイントです。
③ システム構築・設定(SI)
- 現場で走行マップ作成
- 上位システム連携(WMS/ERP)
- プログラミング・ジョブ作成
製造・物流現場では、現場レイアウトに合わせた走行マップ作成やジョブ設定、WMSやERPなどの上位システムとの連携が求められます。これらの設定・構築にかかるSI費用は、ケースによってはAMR本体価格を上回ることもあります。
理由はシンプルで、AMRは「買って置けば動く」機器ではなく、現場の業務フローに合わせて「動かし方」を作り込む必要があるからです。たとえば、搬送指示の出し方(ボタン/タブレット/自動連携)、呼び出し・受け渡しのルール、停止位置の精度要件、交差点や狭路の優先制御、棚・台車とのインターフェースなど、現場側の条件が増えるほど設計・設定工数が増えます。
さらに、WMSや生産管理、搬送コンベヤ、入出庫設備などと連携する場合は、API開発やデータ整備、例外処理(欠品・渋滞・緊急停止時の復帰)まで含めた設計が必要になり、SI費用が大きくなりがちです。逆に言えば、運用をシンプルに保ち、連携範囲を段階的に広げることで、初期のSIコストを抑えやすくなります。
④ サポート・保守
- 保守契約
- ソフトウェア更新・ライセンス
- バッテリー交換等消耗品対応
導入後には、保守契約、ソフトウェア更新、バッテリー交換などの運用コストが発生します。初期費用だけでなく、長期運用を前提とした総コストで判断することが重要です。
AMRは稼働中にソフトウェアが継続的に更新される機器でもあります。ナビゲーションや安全関連のアップデート、OS・ミドルウェア更新、セキュリティ対応などが必要になるため、保守契約やライセンス費が継続的に発生します。また、バッテリーは消耗品で、稼働条件によっては数年単位で交換が必要になるほか、車輪・センサー部品・充電コネクタなども使用環境に応じて劣化します。
加えて、故障時の復旧スピード(代替機の有無、オンサイト対応のSLA、部品供給のリードタイム)は、現場の停止リスクに直結します。見積比較では本体価格に目が行きがちですが、「何年使う前提で、どのレベルの保守を付けるか」によって総コストと安心感が大きく変わるため、長期運用の視点で必ず確認しておきたい項目です。
AMRをできるだけ安く導入する方法
初期投資を抑えるには、本体価格だけでなく全体最適で検討することが鍵です。
① 最小構成から段階導入する
まずは必要最低限の台数・機能でPoC(試運転)を行い、効果を確認したうえでスケールアップを検討します。主要搬送ラインに絞って導入することで、初期費用を抑えやすくなります。
② 不要なオプションを減らす
「高精度センサーを追加したい」「将来使うかもしれない機能も入れておきたい」と仕様を盛り込みすぎると、価格が一気に膨らみます。まずは現時点の運用に必須の機能だけに絞り、追加は効果を確認してから段階的に検討するのがおすすめです。
③ RaaS/レンタルモデルを検討する
購入ではなく 月額利用型(Robot as a Service) を選ぶことで初期費用を抑えられる場合がある(業者と条件交渉)
④ 補助金・助成金を活用する
日本の企業向けでは 生産性向上や省力化投資の補助金制度がある場合があるため、年度ごとの情報をチェックする。AMRや協働ロボット導入に利用ができる補助金の詳細については、以下の記事もご覧ください。
参照記事:協働ロボット導入時に使える補助金4選
⑤ 現場側での設定・調整を実施
システムインテグレーターに全部任せず、社内で設定可能な範囲を増やすことで、SI費用を削減できることが多い。
AMRや協働ロボットの導入ならセレンディップ・ロボクロスにお任せください
AMRの価格は決して安くはありませんが、単純に「高い・安い」で判断すべきものでもありません。人手不足への対応、搬送作業の安定化、長期的なコスト削減といった観点で見ると、十分に検討する価値のある投資です。
重要なのは、価格相場を正しく理解したうえで、自社の現場に合った仕様と導入方法を選ぶことです。小さく始めて効果を確認しながら拡張していくことで、無理のないAMR導入が実現できます。
セレンディップ・ロボクロスでは、AMRや協働ロボットといった省人化・省力化機器の導入支援を行なっているので、お気軽にご相談ください。